タイトルに冠したアドセンスの広告掲載率テストというのは、なかなかにプ
ログレッシヴな、そしていかにもグーグル/アドセンスらしいトライアルへの
招待だ。
既に実践に乗り出して久しいという人もいようが、知らない/気付いていなか
ったという人は、メニューの「最適化」>「テスト」で、「新しいテストの
作成」のひとつにある「広告掲載率」からテストを作成し試してみることが
できる。
そのアドセンス側からの説明は
サイトの広告掲載率を最適化する - AdSense ヘルプ
に詳しい。
「成果の高い広告に絞り込んで配信」と大見出しにあるとおり、広告の絶対
数は減らしつつも推定収益・収益機会は減らさない、というところに実にグ
ーグル/アドセンスらしさが表れている。
それは、グーグルにもアドセンサーにも閲覧者全般にも共通する得失関係 ー
広告が多ければ収益機会は増えるが嫌われかねず、かといって広告を減らせ
ば嫌われない代わりに収益機会は減る、という二律背反にかなりスマートに
解決をつける手段となり得る。
上掲リンク先のヘルプ記事から引用すれば、「ユーザーに表示する広告、特
に収益性の低い広告の掲載数を、推定される収益への影響を確認しながら減
らすことができ」るというのだ。
なんとなれば、「広告掲載による収益の多くは、実際には比較的少数の広告
インプレッションから生じていることが一般的」であり、「特に収益性が高
い広告だけに絞って表示することで、収益への影響を最小限に抑えつつ、サ
イトのユーザー エクスペリエンスを向上させることができ」るのだから、と。
文章を行間・紙背まで込みで読む人ならば、既にこの宣伝文句で食指を動か
すことだろう。
そうでない人なら、あるいは「おいおい、俺様のページに設置してあるせっ
かくの3つ(4つ、5つ)の広告枠なんだから、ちゃんと全部埋まるよう広告
を出してくれよな。減らされるなんて御免だぜ?」と条件反射的に反感・不
安を感じることもあるかもしれない。
だが、その感覚は正しくない。
「広告掲載による収益の多くは、実際には比較的少数の広告インプレッショ
ンから生じている」ー
これは飲み込み同意するのにそう難しくはないテーゼのはずだ。
実際にどこの出稿者のどの広告がクリックされたかというのはアドセンス管
理画面でもアナリティクスその他でも端的には知り得ない情報であるが、少
なからぬアドセンサーは観測から主観的に、メジャー感があり、新規性・タ
イムリー性があり、サイト/ページのトピックによく合致しており、そしてそ
うそう他のどこでもかしこでも見かけるものではない、といった広告こそが、
その8円その24円その52円の収益を生んだものだと大まかになりとも推測を
つけているものだろう。
そこからは逆に、マイナー感ありありで、新規性・タイムリー性に欠け、サ
イト/ページのトピックに合致しておらず、他のあちこちで嫌というほど見か
けるダメ広告の見当もついているはずだ。
RTB(リアル・タイム・ビッディング)の根本原理からすれば、「特等地」
の広告枠には当然収益性の高い広告が出るもので、そこから1等地、2等地、
3等地と「落ちる」にしたがってそこに出る広告も2流3流とまた落ちる ー
「広告掲載による収益の多くは、実際には比較的少数の広告インプレッショ
ンから生じている」というのは、2等地3等地4等地の2流3流4流広告はただ
出てるだけで実はロクに収益を生んでいない、と解釈していい言なのだ。
※1
したがって、そのロクに収益を生んでいない下位5%や15%や25%の広告を
最初っからなかったもののように表示させなくすれば=「特に収益性が高い
広告だけに絞って表示す」れば、「収益への影響を最小限に抑えつつ、サイ
トのユーザー エクスペリエンスを向上させることができ」るわけだ。
テストに入る(もしくは入らないまでもシミュレーション的に予測結果を試
しに見てみる)ための実作業として、当該画面のスライダーを下げ方向=広
告数を絞る方向に動かしてみれば、75%まで絞ってみても推定収益100%を
保ったままであろうと予測が返されてくるはずだ(運営者/サイトの現状によ
るだろうが)。
ちなみに私自身は、この機能が提供されてたしか間もない、’18年2月の末に
75%絞りからテストを開始し、約1ヶ月ごとに80、85、90、95%と絞りを緩
くしていく(多くの広告が出るようにしていく)方向でテストを重ねてみた
が、今のところはその最終段階95%絞りがもっとも収益が上がるという結果
を見ている。
「じゃあ、絞っても全然絞らなくても実はそんなに変わらないのでは?」と
考えるのは早計で、この「95%に絞りパターン」は100%の「全く絞らない
オリジナル」の約1.5倍のRPMを1ヶ月を過ぎた現時点で示している ー これ
は、私のサイト群においては下位5%ほどがダメダメ広告であり、そいつらを
弾くと収益性も実収益も1.5倍ほど高まる、と解釈すべきだろう。
本来ならこの種のテストは推奨どおり90日間周期あたりで気長に実施すべき
ものであろうが、私はまず大雑把に大枠を概観してみたかったのでハイ・ペ
ース策を取ってみたのであり、現行の95%絞りをもう2ヶ月続けてみた後に、
再び90%絞りを改めて3ヶ月試してみるつもりではいる ー ただ、95%絞りが
十分満足いく結果を出し続けてくれればその必要もなかろうという気がして
いるが。
尚、カンニングよろしく端的な答えのみを求めるのではなく、注意深く吟味
しつつ文章を読む人には言わずもがななことだが、私のものとは全く異なる
はずのあなたのサイト/サイト群においてもこの「95%絞り」がもっとも効果
的とは限らない。
コンセプチュアルな情報、もしくは解釈体系をのみ摂取したら、今度はあな
た自身が自分流のテストから解釈・仮説を立てる番なのだ。
※1
“収益性の低い広告の掲載数を減らす” というのは、必ずしも「3枠中2枠にし
か出さない」のような謂いのみではなく、「同じ枠内でも下位の広告の出現
率を減らす」の謂いをも含もうが、ここでは論の煩雑化を避けるため敢えて
端折った。


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